谷川岳 幽ノ沢V字状岩壁右ルート 会山行 


27日(土)
本当は南稜テラス〜3P登って草付きまでと思っていたけれど、雨風が強く様子見。
退屈しのぎに幽ノ沢の偵察へ行き、その後テールリッジ中間で昼食を食べに行く。

28日(日)
曇り時々晴れ。今回の目的の幽ノ沢へ。


やっと雨があがった。 幽ノ沢のナメ27日偵察 ランチ場所まで行こう 巻き道をよじよじ
テールリッジ末端 ランチタイム 幽ノ沢アプローチ・悪い 大滝をよじよじ
染み出しが目立つ カールホーデン上部 さて、登攀のはじまり 先行P&AI沢さん
ビレイ点から 終了点から武能岳 稜線に出て本峰方向 芝倉沢を振り返る


OIIさんから頂いた写真

リンネを超えてのトラバース・矢沢さん 中央が幽ノ沢 中央壁
8P終了・下の白い面はカールボーデン 終了点についたボク
終了点で登攀を振り返るNENさん 充実した登攀OIIさん

日 時    平成200927日(土)〜28日(日)

参加者    OII(田邊)さん、矢沢さん、NEN(石井)さん、担当・・AI沢さん、LTQ(私)・・・下越山岳会
行き先    谷川岳 幽ノ沢 V字状岩壁右ルート
天 候    27日 朝のうち、風雨強い〜曇り・・・・谷川岳山頂付近では初雪があったそうだ。
       28日 曇り時々晴れ間もでる。
目 的    岩登り
装 備    岩登り基本装備+夏山日帰り登山基本装備(双方とも最低限度)+テント泊装備
登攀用具:ロープ(φ8.5mm・50m×2本を2セット)・ハーネス・ヌンチャク・シュリンゲ類・確保器・下降器・カラビナ、ハンマー・ピトン・ジャンピング&ボルトのセット

※ 穴が小さくカラビナの入らないピトン、ヌンチャクのカラビナがピトンの引き抜き方向に作用しそうな時、ダイニーマとかスペクトラの細く強度のあるソウンスリングは重宝する。今回も多用しました。従来のソウンスリングでは小さな穴に入れにくいので、この細いソウンスリングは操作性もよくセットし易い。
但し、素材そのものが熱には弱く擦れによる溶融の可能性のあるところでは×とのこと。



時間   その他

9月27日(土)
04:00 夜明け前の新発田を出る。  高速に乗ると時折雨があたる。
06:30 水上IC
07:00 一ノ倉沢出合P          風雨強く寒い
07:30 ベースプラザ            ベースプラザで待機
09:00 バースプラザ発
09:25 幽ノ沢出合方面へ偵察
10:30 一ノ倉沢出合Pに戻る。
10:50 一ノ倉沢出合P発        テールリッジで昼食とした。
12:30 テールリッジ中間部       食事
13:05 下山開始
14:30 一ノ倉沢出合Pに戻る。     明日の登攀道具の準備、確認を済ませておく。
15:15 白毛門登山口P奥をテン場とした。
20:30 就寝

9月28日(日)
03:50 起床
05:00 テン場発
05:20 一ノ倉沢出合P着
05:30 出発                
05:48 幽ノ沢出合            途中先行Pを見つけた。
07:30 取付着               右ルートには先行2パーティー・・・・中央壁に1パーティー
14:20 終了点               時間かかりました。結構、待ったし・・・寒かった
14:30 終了点発
15:00 堅炭尾根登山道に出る。    
15:10 堅炭尾根登山道発       露岩が湿っていて結構、滑る。
16:30 芝倉沢にでる
17:20 堰堤に出る。           安全地帯に出ました。
17:51 幽ノ沢出合
18:08 一ノ倉沢出合P着
22:25 集合場所解散          途中、入浴、食事


概略
下越山岳会では恐らく、会山行としては岩登りをしたことはないだろうとのOIIさんの話しだ。当初、剱岳の集中登山を検討していたが剱岳はいかにも遠く、テン場まで1日、登攀・登山で1日、帰路1日と、最低3日が必要で、中日が雨なら全てオシマイ。
せめて、予備日が1日〜2日欲しい。ところが、なかなかそうも日程が取れない社会人。それならと、近くて良い山、谷川岳へ変更となった。
目的としては、岩登りの体験的なものなので比較的容易なルートをAI沢さんが選定した。
内容的には、初日にテールリッジから、バンドを通り、南稜テラスへ行き、時間的に空いているだろうから、草付きまで登り懸垂1ピッチで降りて往路下山。
2日目にメインの幽ノ沢V字状岩壁右ルートを登攀、堅炭尾根から芝倉沢を経て下山というルートだ。
両方とも、入門コースといわれている好ルートである。

記録

9月27日
季節外れの寒気が通過中で寒い朝だ。集合場所でOIIさんの車に乗り換え、水上ICを目指す。途中、寒気の影響らしいザッと降る雨が繰り返しフロントガラスを叩く。上越国境の山々は黒い雲の中。暗澹とした気持。
水上ICを出ると薄日が射している。AI沢さんと、「ここで薄日なら、湯檜曽は雨ですね。」と話すが、これがドンピシャ、大当たり。
仕方なく出合の駐車場で様子見を決め込むが、一向に回復の兆しは見えない。車内でじっとしているのも苦痛なので、ロープウエイ乗り場のベースプラザで、待機することにした。
ベースプラザ内では、登山者が天気を気にしながら出かけていく姿があった。中の食堂の壁には名大の研究者がヒマラヤの氷河が衰退していく様子を調査している写真が展示されていた。

少し天候が回復したようなので、一ノ倉へ戻るが、マチガ沢あたりから再び雨。一ノ倉で今日の行程を変更して、幽ノ沢の出合付近の偵察として合羽を着てでかける。気温も低く寒い。トコトコ歩いても身体は温まらない。
幽ノ沢の出合付近にある多くの慰霊のプレート。悲しみの軌跡。
幽ノ沢の出合から少し遡行して、ナメの入口まで偵察。
米子沢のナメの様に濡れると滑る岩質でいやらしい。
水量も多く、明日の減水に期待しつつ戻る。

一ノ倉沢の駐車場に戻っても、まだ、昼前なので、今から呑みはじめては、身体が持たないので、テールリッジでお昼を食べることにして、出かける。
出合から僅かなところから右岸の巻き道を通りゴーロ帯へ入る。ヒョングリの滝は右岸の巻き道をドンドン上がり進む。
テールリッジが近づくとフィックスロープがあるけれど、足元が濡れていて悪いので、懸垂で本谷に降り立つ。渡渉して衝立スラブから来る小沢を渡りテールリッジに取り付く。
6月に来た頃からみると随分手間取る。テールリッツジの草付きに上がり更に上に向かい、中間部で昼食とした。
滝沢大滝の水が吹き上げられて空中で消えてなくなる。
上部の各ルンゼは極めて陰湿でオドロオドロシイ印象を受ける。やはり何か妙な気持を抱く場所だ。

昼食後、ユックリと下山。
ヒョングリの滝の下に7人くらいの人が見える。
一ノ倉の駐車場に着いたら、先ず、明日の登攀道具を決めてセットして朝、ポンと出れるように準備をした。
宿泊場所は、ここでは煩そうなので、少し下り、白毛門の登山口奥に陣取る。

寒いので熱燗が美味しくツイ呑み過ぎる。
OIIさんはナントカ上人のように、あぐらをかいて極めて安定したまま寝ておられた。
皆さん、今朝の早起きもあり早々に眠りについた。


9月28日
夜中に、テントをボツポツと叩く音があった。AI沢さんが外にでたあと携帯を操作している。多分天気情報を観ているのだろう。
3時50分起床。
外にでて空を見るとうっすらと星が見える。何とかなりそうだ。
食事を摂り早々に出発する。途中ベースプラザに寄り一路一ノ倉へ。

暗い中、一ノ倉の駐車場には数多くの車とクライマーが準備をしていた。
AI沢さんが、ボクに一組、幽ノ沢向かったぞ。急ごうと声をあげた。

昨日準備済みなので、簡単な確認だけで歩き出す。
薄暗い中、一ノ倉沢上部岩壁帯とガスがボンヤリと赤く染まるモルゲンロードにチョイ感動。

幽ノ沢出合は随分減水しているがまだ、濡れている。
ナメに入るといよいよ悪い。
1箇所トラバースする所でどうにもならず、地下足袋にワラジの矢沢さんに先行していただきロープを使った。
大滝を登り、ドンドン進みカールボーデン入口。
昨日の雨のせいで、染み出しが多く黒っぽい。・・・・嫌な予感。
上を眺めると、V字に2パーティー、中央壁に1パーティーいるようだ。どうやら我々がV字のビリ・・・・拙いにゃ
取り付では先行パーティのトップが出て行くところ。

カールボーデン上部、V字状岩壁取り付でアプローチシューズ・地下足袋からフラットソールのクライミングシューズに履き替えハーネスを着けてロープを出して登攀開始。

先行 @ AI沢さん、NENさんパーティー(リードAI沢さん)
次発 A LTQ、OIIさん、矢沢さんパーティー(リードLTQ)

1P〜2Pカールボーデン上部でロープを出す。フリーでもいい様な気がするなぁ・・・・
ガバだらけで、傾斜も緩いのでホイホイ進む。
2Pのビレイポイントは2ヶ所あり、1箇所をAI沢さんパーティーが使用中。もう1ヶ所はリングボルトとピトンが打ってあったけれど残置シュリンゲは、シュリンゲという程度のものではなく、腐ったヒモって感じで、いくら緩傾斜の場所でもとても、使う気になれず、テープスリングを結びビレイ。

3Pリンネ横断。濡れていて嫌らしい。トラバースなので、落ちるとトップもさることながら、ビレーヤーにも負担がかかる。
それにしても、支点が少ない。このような場所を含めて、出だしの支点とか出来るだけ早くクリップしたほうが落ちた際に、ビレーヤーに負担がかからない。ビレイポイントからトップがビレイポイントから離れた場所の支点にクリップするまでに落ちると、ボディビレイしているセカンドがアンカーになってしまうので負担が大きくなる。リードする際は、自分の墜落距離もさることながら、ビレーヤーの負担も考えれば、出来るだけ早く1本目の支点は取るべきで、ビレイ点を利用するのも良い手だと思う。

4PはT2まで降りないで斜上する。出だしはフィックスロープを頼りに降りる。その先これもビチャビチャなのに支点なし。滑るとかなり振られるので怖い。でも、悪いのは最初の1手、2手。その先も傾斜の急なトラバースだけどまあ、ホールド、スタンスは沢山あるので観たほどではない。

5P、急なフェースを登る。濡れ濡れの岩に支点2本。V+〜W-というがもっと難しく感じる。気を付けて周りを良く見ながら登らないと残置ピトンを見落とす。ランナウトするので、間違った?と思うくらい。ビレイ点に着く・・・おおっ〜ペツルのハンガーが。

6P、出だしは乾いたフェースでガバだらけ。その上は濡れ濡れ。濡れた岩の間から草が生えていて、岩の上に伸びた草を踏むとよく滑るのでスタンスに草が乗らないように工夫しながら登る。AI沢さんが、水流と草の中で「もう〜!」と声をあげている。どうやら、水牛になっちまたようだ。
何だか上が騒がしい。ん〜・・・・嫌な予感・・・・・ほ〜ら来たよお・・・・(`´)
「カ〜ン」という乾いた音。「ぶ〜ん」という回転音。「ブンッ」という風切り音。
とにかく大声で「ラ〜ク!」と連呼する。怖くて黙っていられないのかもしれない。
落石のうち、大きなモノは多分、大きなテレビ大はあるのではないか?砕けながら落ちていく。傾斜の急なライン上を落ちていくので、自然落下の時間が長く、壁に当るまで時間がかかる。
石が近いと、ブ〜ンという回転音とブンという2種類の風きり音が恐ろしい。ただ、壁に身体を寄せて落石の収まるのを待った。落石は第二波を伴ったものだった。落石が落石を呼んだのだろう。この大きさの石に当れば死んじゃうよね〜。早く終わってちょ〜。って感じだった。人為的なものか、自然発生的なものか判らないけれど、昨日の雨の後だけに浮き石には注意が必要だった。ここのビレイポイントにもピトンの他、1個ハンガーがある。

7P、相当待って、身体が冷えた。待つ間に行動食を摂ったりしていたら一ノ倉沢にヘリ。県警ヘリだ。一ノ倉尾根よりヘリが上がると急にヘリの爆音が聞こえる。何度も旋回している。一度、水上方面へ飛び去ったが、少し時間をおいて再び現れた。ヘリが去って静かになったところで、ようやく登れる。随分待った。濡れ濡れの凹角を登る。
岩はビチョビチョだ。浮石が多いので変なモノを掴まないように気をつけながら細かいホールド、スタンスを拾って登る。直線的に登ったので、支点は2つ。右側にも1箇所あるようだけど、そこまで行くのも悪いので真っ直ぐに登る。

8P、フェースとルンゼの組み合わせ。どこもかしこも、水が滴る状態で濡れ濡れ。幸い細かいながらもカチが豊富にあるので、スタンスが濡れていても、カチラー的には少し心安らぐ。支点は気休めみたいなピトン。ルンゼは細かい中にもいい場所を選んでステミングで登る。ビレイ点にはリングボルト、ピトンの他ハンガー1個

9P、逆層のビショビショのフェイス。ルートを誤った。途中右の草付に逃げ、草付きから再び岩に戻り直上。おろっ?終了点は、ナンと怪しげなピトン1枚。そんな筈はない。このピトン1枚ってのが間違った証拠。ビレイポイントがピトン1枚はないでしょう。多分、出だしからラインを間違えていたと思う。本当は左に寄るのが正解なはず。でも、フェイスの途中にピトン2枚あったんだよなぁ・・・派生というか間違った人が打ったものだろう。
ビレイ点のピトンを打ち足したいが、どうにも怪しげなリスで打ち足すと、既存のピトンが緩みそうで嫌なのと、打ち足すにはいい位置にリスがない。よくよく考えた末そのままとした。

10P、鬱陶しい草つきをにじり上がる。このころ、今度は白毛門の山頂近くにヘリがホバーリング。何だか賑やかな山域だ。傾斜がかなり緩いので、ツガザクラの根元からセルフを取り肩がらみで確保して草付きのセカンド確保。セカンドにそのまま薮尾根を進んでもらう。

11P、薮の先にAI沢さんの顔が見えるので、セカンドにそのまま薮を掻き分け進んでもらう。ボクもセルフを外して薮尾根を通り終了点にでる。別場所にキレイな踏跡がある。チクショウ!・・・9P目左にラインを辿れば、終了点からこの階段状の踏跡か終了点に出たはずだ。

終了点で少しだけ食べて、ロープを片付け稜線を目指す。途中の露岩も滑りやすく要警戒だった。
稜線の登山道に出てからは芝倉沢まで急な尾根道を下る。

芝倉沢に出て一休みしてドンドン下る。堰堤まで着いてようやく、安全地帯に着いたと安心。時間は遅いけれど、林道なのでヘッデンは出さずに帰れるだろう。

中央壁のパーティーはまだ、壁の中だろうか?

退屈な林道歩きを終えて、一ノ倉駐車場に着いた時、やはり、一ノ倉から1パーティー降りてきた。
私たちが一ノ倉を離れる時まだ、数台の車があった。
暗い中を歩いたくせに、「ヘッデンを出さないので残業に在らず」と強弁するボク。
でも、サービス残業か?

全員無事に、下山できた。
NENさんは、誕生日に刺激的な山行をおこない、OIIさんは、登山人生に新たな1ページを加えることができた。と評した。
矢沢さんは少し物足りなかったでしょうか?
それにしても、ルートの中では待ち時間が長く大幅に時間がかかった。



今回はベテラン会員の大先輩方のガンバリが際立っていました。

岩登りについては、若手の会員さんが頑張って積極的にトレーニングを積みルートへ出られるように。と思います。
岩登りには、沢でも必要なロープワークのエッセンスの宝庫ですから是非、前向きに取り組んでいただきたいと思います。
岩登りのロープアクセス、支点工作等が基本となり、沢でのセカンド確保等で、空中への墜落の可能性が低く、滑落距離も短いという場面なら、基本の確保方法から、どれだけ簡易な方法を選択するか?という事になりますが、簡易な方法を基本としてしまうと岩登りでは誤ったロープアクセス、支点工作をしてしまうと思います。新しくベーシックな技術に興味を持ち続けることは自分とパートナーを安全な登山に役立ててくれると考えます。

自分自身、考えているのは・・・・・
@自分自身しようとしている事は何が危なくて、何が危なくないか、判っているか?・・・・本当にそれでいいのか?
A一度起きた(過去の数多ある事故)事は、自分にも条件次第で起きる可能性がある。
B間違いが全て事故になる訳ではない。だが事故にならないのは単に運が良かっただけ。・・・間違える可能性を低くする努力をしているか?
C上記を踏まえて基本的なロープアクセスと自分の使う道具の特性を理解し使いこなすこと。
D安全上重要な作業は徹底して確認する。それ以外はとにかくスピードを上げる。・・・・安全確認&次にやることが判っているか?

岩登りの事故って、普通に机上で考えたら『何で?そんなバカなことを・・・』というものが多いようで、『仕方ない事故』というのは案外少ないようです。つまりヒューマンエラーに起因する事故が多いということのようです。
これは、『続 生と死の分岐点』山と渓谷社 ピット・シューベルト著に詳しい。(チョイと写真がグロなところもありますが・・・)
読むと、そんなバカな事をする筈はないだろう。と思ってしまいますが、ヒューマンエラーというのはそういうものだと思います。

これからも、可能な範囲で最大限安全に配慮した岩登りをしたいと思います。



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